経費精算の領収書で但し書きを「お品代」にリスク
領収書を受け取った時、但し書き(宛名の下などに記載される、支払いの内容を示す一文)が「お品代として」となっているのを見たことは、ないでしょうか。結論から言うと、「お品代」という但し書きだけでは、経費精算において、リスクが残ります。
この記事では、「お品代」がなぜリスクになるのか、インボイス制度(消費税の仕入税額控除を受けるための、新しい請求書のルール)との関係、そして実務でどう対処すればよいのかを、具体的に解説します。
お品代がリスクになる理由
「お品代として」という但し書きは、何を購入したのか、まったくわかりません。この情報の欠如が、経費精算において、次の3つのリスクを生みます。
- 経費として否認されるリスク
- インボイス制度上、必要な記載要件を満たせないリスク
- 私的な支出を紛れ込ませていると、疑われるリスク
経費として否認されるリスク
経費として認められるためには、その支出が、事業に関連していることを、説明できる必要があります。「お品代として」だけでは、購入した商品が、事業用の消耗品なのか、私的な買い物なのか、判別できません。
税務調査の場面では、調査官から、「これは何を購入したものですか」と、質問されることがあります。この時、領収書だけでは答えられず、記憶にも残っていない場合、経費として認められない可能性が高まります。
インボイス制度上のリスク
2023年から始まったインボイス制度では、仕入税額控除を受けるために、請求書や領収書に、次の5つの記載事項が必要とされています。
| 記載事項 | 「お品代」表記での対応状況 |
|---|---|
| 発行者の氏名または名称 | 通常は記載あり |
| 取引年月日 | 通常は記載あり |
| 取引内容 | 「お品代」では不十分になりやすい |
| 税率ごとに区分した合計金額 | 記載がない場合も多い |
| 登録番号 | インボイス発行事業者でなければ記載なし |
「取引内容」の欄が「お品代」のままでは、何を購入したのか、書類上わからないままです。インボイス制度では、この取引内容の記載が、控除を受けるための要件の1つになっています。曖昧な記載のままでは、仕入税額控除が認められない可能性があります。
私的流用を疑われるリスク
「お品代」という表記は、悪意がなくても、私的な支出を紛れ込ませやすい、という側面もあります。実際に、内容の書かれていない領収書を悪用し、私的な買い物を経費として申請する、という不正も報告されています。
そのため、経理担当者や税務署は、「お品代」表記の領収書に対して、より慎重にチェックする傾向があります。正当な支出であっても、表記が曖昧なだけで、疑いの目を向けられてしまう。これは、申請する側にとって、もったいないことです。
実務での対処法
では、「お品代」表記のリスクを避けるために、どう対処すればよいのでしょうか。実務で使える、具体的な方法を紹介します。
1. 発行時に、具体的な品目を書いてもらう
領収書を発行してもらう際に、「お品代ではなく、購入した商品名を書いてください」と、一言添えるだけで、多くの場合は対応してもらえます。手間はかかりますが、最も確実な方法です。
2. レシートを、あわせて保管する
領収書とは別に、レシートを受け取れる場合は、あわせて保管しておきましょう。レシートには、購入した商品名が具体的に印字されています。領収書の内容を補完する、証拠書類として活用できます。
3. 領収書に、自分でメモを書き加える
受け取った直後に、余白へ「打ち合わせ用の飲料代」「事務用品の購入」など、具体的な内容をメモしておく方法もあります。あとから見返した時に、内容を思い出せるようにしておくことが大切です。
「お品代」でも問題になりにくいケース
一方で、「お品代」という表記でも、大きな問題にならないケースもあります。
- 金額が少額で、内容が明らかに推測できる場合(例:文房具店での少額決済)
- レシートなど、別の書類で内容を補完できている場合
- 継続的な取引で、内容が定型的だとわかっている場合
ただし、これらのケースでも、明確に記載しておくに越したことはありません。念のための備えとして、できる範囲で、具体的な記載を心がけましょう。
まとめ:一手間が、あとの安心につながる
「お品代」という但し書きは、違法ではありません。しかし、経費として否認されるリスクや、インボイス制度上の要件を満たせないリスクを、抱えています。
領収書を受け取る時に、具体的な品目を書いてもらう。あるいは、レシートやメモで内容を補完する。こうした、ほんの一手間が、税務調査の際の大きな安心につながります。日頃から、この習慣を意識しておきましょう。